WHALE RIDER/クジラの島の少女 (2002)
ニュージーランドのマオリ族の村が舞台

主人公は少女“パイケア”(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ) オボエラレナイ…

クジラに乗りこの地へ辿り着いたという祖先の勇者“パイケア”の伝説を語り継ぐ族長の“コロ”
(千葉真一じゃ~ない サニー・千葉です) ウソ…
族長である“コロ”は伝統を守るために非常に厳格で、衰退してしまった部族を再び繁栄への道へ導いてくれる伝説の勇者“パイケア”の出現を信じている
彼は自分の息子“ポロランギ”がその役で無いと諦めるとその子供、つまり孫に期待を寄せるが生まれてきた男女の双子の男の子は出産時にその母とともに逝ってしまう・・・
長男でないと伝統を受け継ぐ長にはなれないとと言う仕来たりがある為“コロ”の落胆は大きく、妻と息子を失ったばかりの“ポロランギ”に慰めの言葉を掛けるどころか「次を考えろ」と情けの無い言葉を吐いてしまう
それをきっかけに“ポロランギ”は家を飛び出し、残された娘は“コロ”の夫婦が育てることになる
勇者“パイケア”と同じ名を授けられて・・・
ここまでがプロローグ
普通なら頑なな族長“コロ”が非情な悪役になってしまうような流れなのだが、次のシーンでこの作品がそんなステレオタイプのお話では無いことが分かる

12歳になった“パイケア”(“パイ”と呼ばれているよう…)と“コロ”
“コロ”は自転車に乗せて毎日“パイ”を学校へ送り迎えをしている
この自転車の乗せ方でも愛情深く育てたのだなと感じる

“コロ”は“後継者”絡みの話になると相変わらず“パイ”に酷いことを言ってしまうが、決して憎んでいるのでは無いと言うことが分かっているので“パイ”を哀れと思う気持ちと同時に“コロ”の苦しみ(苛立ち)も理解できる

離れて暮らす親子“ポロランギ”と“パイ”

同じ悲しみと苦しみを共有していて繋がっている感が伝る
それにしても“パイ”と言う少女の純粋さには胸がキュッとなる
娘を良く育ててくれていることを“ポロランギ”も理解しているからこそあんな飛び出し方をしても、父親“コロ”との繋がりが途絶え無かったのではないかと思う

“コロ”は村の子供の中から“後継者”の育成を始める

“パイ”もそれに加わろうとするが頑なに伝統を守る“コロ”は彼女を遠ざける

めげそうになるけれどもそれでも挫けない“パイ”

いつも頼りになるおばあちゃん 素敵なアドバイスをしてくれる

マオリ族の武器「タイアハ」の元チャンピオンだった叔父にこっそり指南を受ける

体力づくりに自分で自転車を漕ぎ、男の子達の乗るバスを追い抜いて行く

そんな“パイ”の頑張りに触発されてか、太り過ぎの「タイアハ」指南役も走り出す


少しづつ何かが動き始める感じ・・・


“パイ”が海と共鳴しているかのよう・・・

そんな中“コロ”は“後継者”選びに失敗してしまい失意の為伏せってしまう ▄█▀█●

失意の“コロ”は助けを求め奇跡を祈るように祖先に向け唄う…
まるでそれを伝達するかのように“パイ”が唄う
このあと、奇跡のようなエンディングと、素晴らしいエピローグへと向かう・・・
エンディングの前にこの作品の一番の見せ場がある

“パイ”の学校の学芸会
ここでの“パイ”の「祖先について」のスピーチが素晴らしい
単にルーツを辿るだけでは無く、今それを受け継ぐ者の努力と苦悩、子孫としての自分、そこから祖先たちの心境にまで彼女は辿り着く
そして祖父“コロ”への想い・・・
彼女がアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたというのも頷ける


またニュージーランドの自然をご当地映画よろしくデコラティブにすること無く普通の目線で捉えている風景が十分に素敵で好感が持てる
マオリ族と言う全くの異文化のストーリーたったが、違和感と言うものを感じなかった
伝統を守ると言うことはナショナリズムを馬鹿みたいに誇示することでは無いと思った

彼女の瞳の中に未来へと引き継がれてゆくであろう伝統の光が輝いて見えるような気がした
エピローグはそんな希望の船出を見ているようで心が震えた